お念仏は心のマッサージ/令和3年2月の法話
【担 当】 田中宗龍 師 〔愛知県西尾市 阿弥陀院 住職〕
【御 題】 「お念仏は心のマッサージ」
二月も半ばを過ぎました。間もなく、寒さも緩んで、過ごしやすい季節となります。しかし、春寒・余寒と言うように、もうしばらく用心が必要です。
冬場は特に、寒さを堪えようと猫背になるせいか、肩凝りがひどくなります。肩だけでなく、首・肩甲骨まわり、腰・お尻とカチカチに凝り固まってしまいます。それに伴って、頭痛・方々に鈍痛がでたり、精神面でも、鬱ぽかったり、怒りっぽくなったり、不安が強くなったりと様々障害が出ます。さらに、コロナ禍の自粛生活も相まって、気分転換やストレスの解消もままなりません。身心ともに凝り固まって、苦しまれている方が多いのではないでしょうか。
お経様には「阿弥陀様のお慈悲の光を頂くと、身も心も柔らかくなる(取意)」とありますが、まさに真逆の状態です。
「逆も真なり」と言うように、心と体を柔らかく溶きほぐすことによって、阿弥陀さまのお慈悲の光に気づけるのではないでしょうか。
体は、暖めたり、ストレッチしたりさらに按摩してもらったりと、様々柔らかくすることができます。しかし、心については、取り出して、マッサージするわけにはいきません。どうすれば凝り固まった心を柔らかく溶きほぐす事ができるのかという事ですが、
西山上人のお言葉に、「念佛と云ふは、佛を念ずるなり。佛を念ずると云ふは、その佛の因縁を知りて、その功徳を念ずるを、真の念佛とは云ふなり」(『女院御書』)
阿弥陀さまは、私たち凡夫を、なんとか救いたいと誓願を立てられました。そして、非常に長い間、大変な修行を積んで、その誓願を成就して仏と成られました。つまり、阿弥陀さまの誓願成就の最大の原動力が、私達凡夫の存在であります。真の念仏とは、その御心のありがたさも含んで念仏せよとのご教導です。私に「おかげを知って、御恩に報いる」と解釈します。
心が凝り固ってしまうと、思考にも柔軟性がなくなります。執りが強まり、利己的になって、気が付けば孤立しているわけです。孤独に苛まれ、圧し掛かる不安や心配は増すばかりの悪循環に陥ってしまいます。私たちが凡夫たる所以であります。
そんな時こそ、愚かで弱い我々を救ってやろうと誓願を立て成就された阿弥陀さまのおかげを想い、その御恩に報いるべくお念仏をする。同時に、顔をあげ、周りを見渡してください。愚かで弱い自分を、頼りにしてくれる家族があり、支えてくれる仲間があります。そのおかげを知って、その恩に報いるべく懸命に生き抜くことこそ、真のお念仏であり、心を溶きほぐすことになるのではないでしょうか。
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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