平成24年8月の法話/新美和彦師
【担 当】 新美和彦 師 〔愛知県蒲郡市 玉泉院 住職〕
【御 題】 「私の中に仏さまが生きている」
最近、叫んだり、嗚咽をもらしたりしながら号泣し、政治信条を訴えた県議の記者会見はテレビやネットで話題となりました。私たちは成長に合わせて、3種類の「泣き」を経験しています。身体的ストレス泣きと、悔しさ・悲しみ泣きと、感動・共感泣きの3つです。
赤ちゃんはお腹が空いたり、おむつが濡れて気持ちが悪かったりすると「身体的ストレス」によって泣きます。泣くことで理解してもらうことが、コミュニケーションの一つになるのです。しかし成長する過程で、泣くことで大人にストレスを解消してもらうのではなく、言葉で要望を伝えることを覚えていきます。そうして、子どもは「身体的ストレス泣き」を卒業していくのです。
その次に流す涙は、「悔しさ・悲しみの涙」です。好きな人にフラれた時、ペットとのお別れの時…。抑えきれない感情が涙となってあふれ出るのです。そして、大人になって流す涙が「感動・共感の涙」です。「他(ほか)の人の心を理解し、自分のことのように喜んだり悲しんだりすること。」 この共感性が私たちに備わっているから、お互いに理解し合い、支え合い、社会の中で円滑な人間関係を築いていくことができるのです。県議は、幼児性を残したまま“大の大人”となったのです。
「心の教育」を疎かにすると取り返しがつかなくなります。
私たちの命は、「情報」として、ずっと、親から、そのまた親から、そのまた親から・・・というふうに、何百年、何万年、何百万年というふうに伝えられてきているからこそ、今私たちのこの命があるのです。次の生(せい)にやがて心の奥底に、潜在意識が生(う)み出されてきます。それが、仏教では、「アラヤ識」という概念です。遺伝子の中に含まれている「DNA」とそうとう重なっていると思います。 その心のいちばん奥底の働きによって、今、自分でわかっているつもりの心の働きが 規定されて、コントロールされているということです。
ブラジルのFIFAワールドカップで、 日本人のサポーターの青色のゴミ袋の応援と清掃 には感動いたしました。平常時でなく、何か事態の起こった時に露わになる人間性・気質・素養です。 仏教国日本の国民が、培った「アラヤ識」が私たちに在るのです。「心に刻み込まれた気質、人間性」です。「わたしの中に仏さまが生きているのです。」千年以上も、仏壇や、墓や、お寺にお詣りしてきた習慣です。そこで、合掌し、「南無阿弥陀仏」とお念仏ができあがった状態が、自分の心のあり方、生き様を創り、DNAとして残ります。 私たちは、健康診断 に、一年に一度は行きます。 心の健康「生き様」点検は、どうでしょうか?
「健康診断は、一年一度。生き様点検は、一日一度。」 「お陰様で、有り難う、御座います。」と、一日一度は、手を合わせ「南無阿弥陀仏」と称えて見ましょう。 (十念)
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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