平成24年6月の法話/新美和彦師
【担 当】 新美和彦 師 〔愛知県蒲郡市 玉泉院 住職〕
【御 題】 「いけらば念仏の功つもり~(法然上人御詞)」
いけらば念仏の功つもり、しなば浄土へまいりなん
とてもかくても、此の身には、思いわずろう事ぞなきと思いぬれば、
死生ともにわずらいなし
この御詞は、「法然上人」が常々仰せられた御詞です。 死後の事ではなく、この現世において「生まれ変わる」ことを成し遂げられたことへの述懐です。 「生まれ変わる」とは、往生することです。 理屈ではありません。 自分で意識することなく、阿弥陀さまが勝手に、お念仏の功を積んでくださるのです。 これが、阿弥陀さまの「真実他力」です。
「お陰様で有り難う御座います。」と感謝のお念仏が、口からほとばし出る時。 まさに、「念仏の功つもり」生まれ変わり、生かされているのです。 「日々是好日」で、どんな事が起ころうとも、「今・ここ・私」は、生きることに一生懸命でなければなりません。 生きるとは、阿弥陀さまに生かされ続けることです。
戦後六十六年になりますが、六十六年間をかけて夢のような生活を実現したのです。 多少の不満はあるでしょうが世界的に見れば欲しい物はなんでも手に入れることができる社会であり、世界で最も長寿の国を実現しました。でも本当に私たちは幸せになったのでしょうか。 確かに長生きになり、あふれんばかりの物に囲まれた生活ですが、本当に幸せな生活なのでしょうか。人生は楽しいことばかりではなく、欲しくても手に入らないことはいっぱいあります。また、生きたくても生きられないというように、苦しいことも辛いこともあるのではないでしょうか。
人間は毎日毎日戻ることの出来ない時間の流れに流されて、日に日に年老いていくのではないでしょうか。つまり、実は私たちにとって都合の悪い「老い」こそが生きていることの実質なのです。 私たちが生きるとは、そういう苦悩する人生を生きることなのです。 思い切って老化を楽しんでみてはいかがでしょうか。「アンチ・エイジング」ではなく「エンジョイ・エイジング」です。即ち、加齢に立ち向かうのではなく老化を楽しもうというスタンスで生きることです。
お釈迦様のお悟りになった真理とは、私たちを苦悩から逃避させるのではなく、苦悩の正体に目覚めさせ、苦悩する人生を引き受けて立ち上がらせていく教えなのです。 「苦悩に向き合う力」それがお念仏です。 そして、「生まれ変わらせる力」それもお念仏です。
法然上人のような立派な方でさえ、『自分の力で心安らかになることは出来るものではありません。 だから阿弥陀様の本願の力「真実他力」こそ私たちのために用意されたものであります。』とおっしゃっています。 南無阿弥陀仏というお念仏の中に毎日を過ごすことを薦められました。
その法然上人が口癖のようにおっしゃっていた言葉、それが、「生きている間はお念仏を称えてその功徳が積もり、命尽きたならばお浄土に参らせていただきます。 いずれにしてもこの身にはあれこれと思い悩むことなどないのだと思えたならば、生きるにも死ぬにも、お念仏を称えることのできる日々であれば、なにごとにも悩みなどなくなり、心が穏やかになり、「生まれ変わる」ことができます。」とおっしゃっておられるです。
このようなお念仏の日暮らしをしたいものです。 (十念)
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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