誰のため?/平成29年6月の法話(2)
【担 当】 中村真一 師 〔愛知県蒲郡市 覚性院 徒弟〕
【御 題】 「誰のため?」
毎年、この時期になりますと、自坊の境内には沢山のツバメがやって参りますが、先日、境内の隅でうずくまっていて、どうやら飛ぶことが出来ないツバメを1羽、私が見つけました。このままだと猫に食べられるか死んでしまうと思い、かわいそうだと思ったので、そのツバメを保護して、そのまま動物病院に持っていきました。そうしましたらこの時期、私と同じように、ツバメを保護して病院に持ってくる人が、他にも沢山いたらしく、病院の受付には、「野鳥(主にツバメ)は保護しないでください」と貼り紙が張られていて、動物病院の先生も「最近はツバメの診察ばっかりだ」と、困った顔をされておられました。私と同じような人が他にも沢山いるんだなあと思いましたが、幸い、ツバメに怪我はなく、巣立ったばかりの、まだ、うまく飛べないヒナだと言われ、親のツバメも近くにいるだろうという事でしたので、病院から帰った後、元いた場所にツバメを返してあげようと思いました。
私は、「かわいそう」だという気持ちで最初ツバメを保護致しました。ですが、保護したツバメを見ているうちに、「かわいそう」なツバメが段々と、「かわいらしい」ツバメに見えてきて、自然に返すのが何だか惜しく、なってしまいました。このままこっそり、ペットにしてしまおうかと、そんな気持ちも、段々と湧いてまいりました。最終的に、やはりツバメは自然に返したのですが、正直、手離したくないなあという気持ちもございました。ツバメのためを思って保護したはずが、いつの間にか、自分のためを思っていたわけで御座います。
法然上人が詠まれたお歌の中に、「池の水、人の心に似たりけり、濁り澄むこと定めなければ」とございます。人の心というのは、池の水のように移ろいやすく、きれいな気持ちになったかと思えば、気付かない内に魔が差して、自分勝手な気持ちになってしまう事もございます。
そして、そんな私たちだからこそ、日々の日暮らしの中で手を合わせて、一息つく時間を持つことや、今の自分は胸を張って仏さまの前で手を合わせることが出来るだろうかと自分を見つめ直してみる時間を持つことが大切なのではないかと思うわけでございます。
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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