家庭のSDGs/令和4年12月の法話
【担 当】 中村真一 師 〔愛知県蒲郡市 覚性院 徒弟〕
【御 題】 「家庭のSDGs」
「家庭」のSDGs
近年、「SDGs」という言葉をテレビやネットでよく見かけるようになり、国際的にも環境問題に対する関心が益々高まってきたように感じます。
日本がまだバブルであった頃、とある田舎の山の頂上を開発してゴルフ場を作った町がありました。結果としてその町は経済的に潤うことが出来ましたが、山を開発した際に今までそこに自生していた木々を伐採したことで、雨水の流れに変化が起こりました。近年、その地域に激しい雨が降ると今まで氾濫することのなかった川が氾濫を起こすようになってしまったそうです。私たち人間は、自然を全く開発せずに生きてゆくことは出来ません。しかし、自然を「開発する」ことと「破壊する」ことは同じことでもあるのです。
私には、今年三歳になる息子がいます。言葉を話すことが出来るようになる前から英語のDVDを見せていたおかげで、息子がたまに話す英語も発音に至っては既に私よりも上手です。最近は、小学生の頃から塾に通う子も多いので、ウチの息子も小学生になったら塾やピアノ、プログラミングなど、沢山の習い事をさせるようになるかも知れません。親は子供の将来のために、懸命になって自分の子供を開発しようと頑張ります。しかし、子どものために、あくまで良かれと思ってやっているので、「今の開発が子どもの本来の自然な状態をどの程度破壊しているのか」、「開発に夢中になることで、本来の自然な親子の関係がどの程度破壊されているのか」ということについてはあまり考えることがないのかも知れません。「菜根譚」という書物には、家族について次のように説かれています。
「家庭に個の真仏あり、日用に種の真道あり。人よく誠心和気、愉色婉言、父母兄弟の間をして、形骸両つながら釈け、意気こもごも流れしめば、調息観心に勝ること万倍なり」
本当の仏さまは、日々の家庭生活の中におられます。和らいだ心と穏やかな表情、優しい言葉で家族同士の心が解け合うような生活を送ることが出来たなら、それはお堂に長時間籠り座禅を組むことより、何万倍もの功徳があるのです。価値観や日々の生活が目まぐるしく変化してゆく今の世の中を生きてゆく上で、本当に大切なことを見失ってしまうことがないように、仏教の教えを心の支えとして日々の生活を歩んでゆきたいと思う次第でございます。
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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