仏様は物を申します/平成29年10月の法話(2)
【担 当】 横井崇之 師 〔愛知県刈谷市 崇福寺 徒弟〕
【御 題】 「仏様は物を申します」
お盆になりますと、檀家さんを一軒一軒回り、お経をあげる棚経が始まります。私の寺も八月十三日から三日間、棚経をしておりますが、なにぶん、たくさんの檀家さんの家を回る為、残念なことにゆっくりと、お話をすることが出来ません。そんな中でも日頃疎遠で一年ぶりに会う、ご家族の近況など、いろいろな事を多少なりとも、知ることが出来るのは、ご先祖様のお陰と思いとても感謝しています。
ある檀家さんの家を回った時の事ですが、玄関を上がり、いつもの様に仏間に向かおうとすると「おっ様、こちらです!」と、二階に通されました。すると去年まで一階の部屋におまつりしていた、仏壇が二階の部屋に移されていました。話を聞きますと東京の大学に通っていた息子さんが、この春、就職の為にこちらに戻って来て、仕事柄、朝が早く、夜帰宅が遅いので、生活のしやすい一階の仏間だった部屋を、息子さんの部屋にしたとの事でした。そして大きな仏壇は家族総出で二階に運んで、とても大変だったそうです。
私は部屋の模様替えが好きで半年に一回ぐらい大掃除も兼ねて本棚やテレビの配置を変えます。しかしこれらはただの物でしかありませんが、仏様をおまつりする、仏壇は阿弥陀様の極楽浄土を表しています、ご先祖様の住まいを、私達に分かりやすく、お参りしやすい様に演出していて、当然そこには仏様がおられるのです。皆さん想像してみて下さい。自分が山の様に大きな大男で足元に小さな菓子箱の様な家があります。もちろん、その箱の中には小さな家族があり、苦楽を共にし、両親の介護や子供の教育など、様々な事で喧嘩をしたり、時には笑ったり、時には泣いたりしながらも、肩を寄り添って日々の生活を送っています。しかし大男のあなたは、何も知らず自分の行く手にある、その小さな箱が邪魔なので、ヒョイと持ち上げて放り投げます。その時、箱の中ではどうでしょう、びっくりして今まで幸せだった小さな家族に突然予期しなかったような悲劇が起こり、地震が来て、大惨事となっている事でしょう。
仏様は物を申しませんが、その家の守り神です。本棚やテレビの様に、何の気なしに、自分たちの都合で、仏壇を動かせば、菓子箱の家の家族の様にびっくりするでしょう。そして、ご先祖様は「私は引越しの話など聞いていない!」と仰っているかもしれません。だからといって私達の生活も大切です。暮らしやすい様に住まいを工夫して、時とともに変わっていくのは止むを得ません。その様な場合には、お坊さんに、お経をあげてもらいましょう。出来ない時は家族でしっかりお参りし仏様に事情を説明して、お断りを入れるのが筋ではないのでしょうか。常日頃から、仏様と向き合っていれば、その御心が、だんだんと分かってくると思います。
仏様は物を申さないけれども、私達が気づいてないだけで、本当は物を申しています。皆さんが仏様と共に日々の日暮し送れますよう心より願っています。
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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